F1レベルの最高技術がエコ・マンションに欲しい
一般人にとって住宅の次に高い買い物と言えばクルマだが、アメリカではGMなどの自動車メーカーが危機にさらされている。一時の原油高で燃費の悪い大型車が敬遠され、燃費のよい日本のエコ・カーが一気にメジャーになったのだ。もっとも日本の自動車メーカーも、今では円高と景気の後退により、一転して苦しい状態に陥っているのはなんとも皮肉だ。
私は頭文字に「A」が付くフランスの古いスポーツカーに乗っている。15年以上昔の「エコ」とはほど遠いクルマだ。車検の排ガス検査をパスしなかったこともあるし、ガソリン消費量も多い。それでも乗っているのはドライビングが好きだからだが、近頃はできるだけ乗る回数を減らすことを心がけ、効率のいいエコ・ドライブを実践している。
ちなみにF1の世界では決められたレギュレーションの中で熾烈なエンジンの開発競争を繰り広げ、各メーカーが新しい技術をつくりだしている。日本のTOYOTAもHONDAもそのようにして燃費が20km/リッター近くで走るハイ・パフォーマンスなクルマを世に送り出しているのだ。効率のいい燃料供給に必要なオンボードコンピュータも、可能な限り速く、長く走るというF1の技術から進化したものだ。
身のまわりでは「地球にやさしい・・・」「次世代の子供たちのために・・・」と声が上がっている。だから今回は「エコ」について話しをしたい。今年(2008年)の夏は洞爺湖サミットが行われ、地球温暖化を抑止しようという気運が高まってきた。国も、企業も、人々も、こぞってエコに向かって進むのはいいことである。
さて、そろそろマンション業界に話を移そう。「エコ・マンション」って一体何だろう?まわりでよくこんなことを聞かれるけど、調べてみてもどうもはっきりしたエコ・マンションの定義はないようだ。
たとえば「オール電化マンション」。これは確かに家庭で火を使わないからガスを燃やすよりも地球を暖めることはないような気がする。ただ電気を作るのに、火力発電は原油を使っているし、原子力にしても原料であるウランの精製や処理に大量のエネルギーが消費されるそうだ。するとオール電化マンションはエコではないのか?なんて疑問も生まれる。
そもそもマンションは一度購入したら、家族の変化や成長の中で永く住みつづけることが常識的だ。オール電化にしても技術の進化に伴って、将来使いづらいものになって欲しくはない。地上デジタル放送のようにシステムが移行して設備も変更するといわれても困ってしまうからだ。
以前エコに取り組むマンションについてコラムで紹介した(マンション業界コラムVol.50)。それはマンションで使用する電力の一部に、自然界から得られる太陽光、水力、風力など、繰り返し再生可能なエネルギーから生まれた電力を購入してあてるというものだ。ちょっとややこしいが、要するに二酸化炭素をできるだけ排出しないで作られたクリーンな電力を使うということ。これならもっとエコ・レベルが高いのではないか。
ここでエコ・マンションをいくつか紹介してみよう。
- エコヴィレッジ鶴瀬
コンセプトに「エコミックスデザイン」を掲げてシリーズ展開するエコヴィレッジシリーズ。「緑」「風」「陽」「水」をテーマに、緑化を重視した敷地計画、住戸内ではバルコニーの「緑のカーテン」や床・壁・天井の調湿性に配慮した素材選びなどを実施している。 - ビオ・ウイング ユーカリが丘
屋上にソーラーパネルを設置してマンション共用部で使用する電力を一部まかなったり、マンション全体で電気を一括購入することで節約と節電を心がける配慮をしたり工夫がいろいろ。また省エネルギー性能や環境への取り組みなどを評価する「環境共生住宅」の認定も受けている。 - クレヴィア本郷
エコ・マンションとはうたわれていないが、前述のように自然界の再生可能なエネルギーでつくられたクリーンな電力を購入することで、間接的にCO2削減に貢献しようという試みをしている。マンション購入者も住んだときの気分がいいのでは。
マンション選びはまず立地からといわれることが多い。生活の拠点となる場所は大事だし、暮らしのパターンや地縁性、そして嗜好性も重要だ。だからこそ器としてのマンションにはオールラウンドに高品質・高性能を前提としたい。
再生可能な自然エネルギーは、エコ・マンションにとって理想に近いかもしれない。しかし、残念ながら今のところコストが高い。住宅づくりの世界でも、F1のように最高の技術を競い合う「スーパー・マンション」(ちょっと響きが安っぽい?)のようなものがつくられて、いち早くエコ・エネルギーが一般化されるとよいのだが。一見クルマよりも先にマンションの「オール電化」が進んでいるように見えるが、まだまだ本当の意味でのエコ・ソリューションははかられていない。