2008年首都圏マンション市場の上半期総括

2008年09月01日

<新規販売が大きく減少した首都圏のマンション市場>
首都圏で、新規に発売されるマンションの戸数は、90年代の半ば以降、年間に7万戸~9万戸という状況が続いていましたが、昨年大きくその状況が変化しました。
年間の供給戸数(=新規発売戸数)は6万1千戸にとどまり前年を大きくしたまわりました。
その要因としては、昨年6月から施工された建築基準法の改正によって、建築確認の取得に時間がかかってしまい、新規の供給が減少してしまったことが大きいといわれています。しかし、減少したのはそれだけが原因ともいえず、マンションの価格が上昇しすぎてしまって、なかなか一般の人が手の届く物件が少なくなり、結果として売れ行きにかげりがでたことで、不動産会社が供給に対して慎重になったことも要因のひとつでしょう。
今年の前半は、その余波から供給戸数が7月末時点で2万5千戸となり、今年の年間供給戸数は5万戸を切りそうだというのが民間調査機関などの見解です。

<今年前半のおさらい(新規発売と着工戸数)>
今年前半の新規発売戸数は昨年の同時期に比較すると、28%と大きく減少しています。これを単純に年間に適用すると4万戸台の前半になりますが、実際にはもう少し多くなりそうです。
なぜなら、今年の前半はマンションの着工戸数は1-6月で55,411戸あり、これは2007年の1-6月と比較しても7.5%しか減少していないのです。昨年は7月以降、建築確認の遅延によって大きく着工戸数が減少したので、このままいけば着工戸数は昨年を上回る可能性が大です。

ここで、ちょっと着工戸数と供給戸数(=新規販売戸数)について整理しておきましょう。

供給戸数というのは、不動産会社が販売した戸数をいいます。よく、新聞などで、「○月の首都圏マンションの供給戸数は、前年同月比○%減少して、○千戸でした。」というような感じで使われます。
着工戸数というのは、マンションの建築に着手した戸数のことです。着工するには、建築確認申請をして、確認取得した上で着工することになります。
過去の事例からすると、着工戸数は供給戸数より多くなることが通例です。分譲マンションとして着工されても、大口の投資家やファンドが買い取り賃貸マンションとして運営したりすることで、この差が出ていると思われますが、その差は大きな場合でも6掛けくらいです。

この視点で、現状の着工戸数と供給戸数の関係を見ると、着工戸数のわりに供給戸数が少ないと思います。つまり、今後供給されるであろう新規の着工が今年前半は昨年なみに進んでいるということです。
こういう状況からして、私の個人的な予測としては、後半に入って供給戸数が増加する可能性もあるのではと思っています。

<価格やエリア別の特徴はどうか>
マンションの供給がどのエリアで多かったかという視点で見ると、08年前半は大きな転換期でした。
マンションの「都心回帰(=都内での供給が増えること)」は、94年のマンション大量供給時代の前半、03年に掛けて進行していました。そして、03年をピークにして、その後は07年まで今度は都心の供給が減り、郊外の供給が増えていったのです。同時にマンション価格も上昇していきました。
しかし、08年前半はその状況の「切り替えし」地点になりそうです。都区部の供給シェアは5年ぶりに上昇に転じ、首都圏全体で見ると平均単価はまだ昨年なみですが、都区部の単価は前年比5%のマイナスに転じました。

<「唯一性」というキーワード>
売れ行きが鈍り供給が減少している昨今ですが、それでも人気物件は出現しています。そこには「唯一性」というキーワードがあると思います。
ある私鉄沿線の商業集積の高い駅で予定されている再開発、その中に計画された超大規模なタワーマンションの広告がこの春開始されましたが、会員申し込みは当初の予定数を大きく上回っているそうです。人気駅の駅近複合開発、その中のタワーマンションという「唯一性」が評価されているようです。
こうした派手な事例でなくても、昔から人気の高いが、なかなかマンションが出てこなかった場所などでは、小規模の一般マンションでもお客様の評価を獲得して売れている例がみられます。
「唯一性」とは、お客さんにとって「自分仕様」ということなのでしょうが、市場の趨勢がどうあれ、購入してそこに住むのは購入者自身です。自身にとっての価値があるかどうかを見極めることがまずは第一ということでしょう。

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