福岡市ではアイランドシティや香椎副都心など、 大規模開発に牽引されてマンション供給が進む
今回は九州からマンション事情についてお話しします。
<はじめに>
九州といっても広く、各県庁所在都市およびその他主要都市で、それぞれに分譲マンションの供給が行われています。そして、マンション事情は、一部共通性はあるものの、基本的にはそれぞれに異なるため、ひとまとめに言うことはなかなかできません。
そこで、ここでは九州最大の都市である福岡市に絞って、最近のマンション事情を簡単にまとめてみようと思います。
テーマは2つ。最近の供給および販売の低迷、それから東区への供給シフトです。
■福岡市※2007年3月、住民基本台帳。
○人口:1,363,841人
○世帯数:634,597世帯
<福岡市のマンション需給、価格の動向>
※「2008年」は2008年5月末現在の数字です。
■2007年に供給・販売ともに激減、2008年も当面低調
福岡市の市場規模はざっと4000戸余りというのが一般的な認識であり、少ない年でも4000戸を多少割る程度と思われていました。
しかしながら、2007年は、年間新規供給戸数が2733戸、年間総販売戸数も2890戸というように、4000戸どころか3000戸を割ってしまいました。これは過去10年をふりかえってもなかったことで、おどろくべき少なさでありました。その傾向は2008年に入っても当面(5月末まで)続いています。
■供給減少の主要因は新建築基準法
新規供給の大幅減の背景には、新建築基準法の施行による建築確認の遅れがありました。当初の予定通りに発売できない物件が多々あったため、結果として、新規供給が減少したというわけです。もちろん、このほかにもエリアによっては用地取得難により新規開発ができなかったということもあります。しかし、根本要因は建築確認の遅れにあったといえるでしょう。
※「2008年」は2008年5月末現在の数字です。
■販売低迷の理由は供給減のせいか価格上昇か
新規供給の減少の理由は比較的はっきりしていますが、総販売戸数の減少の理由は何なのか。新規供給の大幅減少に伴い、魅力的な物件が減ってきたというのが一因かもしれません。ただ、価格が2007年に明らかに上昇していることから、価格上昇こそが販売低迷の理由と考える向きが多いようです。
■価格の上昇はすぐには止まらない
福岡市のマンションの平均価格は2003・2004年が2800万円台、2005・2006年が2900万円台でしたが、2007年は3200万円台へと大きく上昇。そして、2008年は、まだ5月までの数字ではあるものの、さらに大きく上昇しています。この背景には建築資材の値上がりに伴う建築費の上昇があるため、なかなか下げるに下げられないというのが現実のようです。一方では、土地自体は下がってきているとも言われ、どこかで上昇は止まることになるでしょう。いつになるのかは、なかなかむずかしいところです。
<東区への供給シフト>
※「2008年」は2008年5月末現在の数字です。
■全体的な低迷の中、東区が市場を下支え
さて、福岡市において新規供給が減少する中、ひとりがんばっているのが東区です。東区では2004年から新規供給戸数のシェアが、それ以前と比べてあきらかに高くなっており、2007年にはなんと41.9%ものシェアとなりました。新規供給が3000戸を割ってしまった2007年でしたが、東区だけはとくに落ち込むこともなく、新規供給を行ったのでした。
■新しい開発が、東区の旺盛な新規供給を支える
東区における旺盛な新規供給の背景には、3つの大規模開発があります。旧国鉄の操車場跡地の再開発である「香椎副都心」、ゴルフ場跡地の再開発である「香椎浜(ベイパークシティ)」、そして埋め立て地の開発「アイランドシティ」です。2003年から、まず香椎副都心でマンション供給が始まり、その後も続いています。
○香椎副都心におけるマンション供給
2003年にまず1棟目の新規供給が行われ、その後もほぼ毎年新規供給が続いて、2007年5月末で計774戸が供給済。6月以降は、駅前ツインタワーをはじめ、確定しているだけでで3物件・768戸が順次供給されていく予定です。
○香椎浜(ベイパークシティ)におけるマンション供給
2004年から供給が行われ、2008年5月末現在で338戸が供給済。このあとは、500戸規模の超高層マンションが計画されています(時期は未定)。
○アイランドシティにおけるマンション供給
2005年に「照葉のまち」で中高層マンションの供給がはじまり、2007年6月にはトリプルタワーマンションも発売されました。2008年5月末現在881戸が供給済。今後、500戸余りの新街区での供給が予定されており、その後もさらに新しい街区での供給が想定されています。
■もうしばらくは、東区頼みか
以上のように、東区においては大規模開発地にまだまだ供給予定があり、もうしばらくは福岡市の市場を牽引していくことになりそうです。いつの時代でも、大きな新しい開発が分譲マンション市場を牽引していきますね。