港北ニュータウンで発見!ステキな「デザイナーズマンション」の中味とは?
「デザイナーズマンション」という言葉は、よく雑誌の見出しに使われているのでわりと一般的ではないかと思う。誰もが一度は聞いたことがあり、なんとなく知っているだろう。もともとは都心部のワンルームやコンパクト系の賃貸マンションで流行し始め、入居者の嗜好性に合わせてより「デザイン性」を売りにする物件が増えてきたのが背景だ。
それからは分譲マンションにも普及して「白を基調にした外壁」「ガラスを多用した外観」「漆喰や自然石の組合せ」など、さまざまな「デザイン性」がいまやマンション建築に氾濫している。これは都市の景観を考えるときにとても重要なことで、周辺環境や街並みと共存しながら、いかに「個性」を主張しながら成功するかが課題になる。
康和地所の「リリーベル港北センターキューブ」が神奈川県の港北ニュータウンに誕生する。今回は建物が完成したということで、港北ニュータウンの美しく整備された「環境」と、本物件の「建物」+「居住空間」がいかに調和して成立しているかを確かめに行った。
港北ニュータウン内には3つの康和地所の物件があり、「世界にひとつだけの家」という共通コンセプトを掲げている。「リリーベル港北センターキューブ」はその1つであり、このプロジェクトの第1弾。広告ではデザイナーズマンションと謳われていないが、これはまさに「デザイナ―ズマンション」そのものである。
「画一性を廃して個性ある住宅を」と提唱するデザイナー(建築家)の言葉によると、本物件では「開放性とプライバシーという矛盾する要素を両立させながら、公園や緑道がある周辺環境を取り込むこと」を考え、人々に注目され長く愛されるために「動きのあるデザイン」を目指したという。
これは作り手の気概を十分に感じることのできるユニークな発言だ。
建物外観は白とブラウンを基調にしたツートーンカラー。個人的には北欧風のモダンなデザインテイストとちょっとレトロな空気も感じる印象だ。公園と緑道方面に向かうエントランス周りとファサードにはルーバー(格子)が採用され、外に向かって開かれながら、視線としては半ば遮るような巧みな意匠が施されている。これにより限られたスペースの中で採光や通風に優れた設計を可能にしている。
全体プランは総戸数10戸に対してすべての住戸が角部屋で、しかもほとんどが3面以上の開口を確保。特筆すべきは同じ間取りがひとつもなく、10タイプには「A」から「J」のアルファベットが1住戸ずつ割り当てられている。まさに「世界にひとつだけの家」を具現化しているのに感心する。
さてユニークなプランを紹介すると、1階のAタイプ(3LDK)。これは地下1階とつながるメゾネットタイプだが、敷地が緩やかな傾斜地であることと建物全体に開放性を採り入れたことで地下住戸というイメージはまったくない。
地下1階はリビングダイニングと多目的に使えるプレイルームが配置されている。LDの床の延長にはオリーヴの木が植わるパティオがあり、独占的に使用できる。またLDは上階の1階と吹抜けでつながり、壮大な空間を作り出す。とても明るく、まるで戸建住宅のようだ。キッチンスペースとLDには2ステップの高低差を設けてあり、これが効果的に変化と豊かさを演出して、なかなか贅沢である。
もうひとつは、2階から4階まで連なるDタイプ(3LDK)。下の階から順に「2ベッドルームのあるプライベートスペース」「リビングダイニングとキッチンのパブリックゾーン」「ロフト感覚で使えるベッドルーム」としっかり空間が分離されている。
各階は螺旋状の階段で結ばれていて子供たちは喜ぶだろう。LDから上階にかけては吹抜けが設けられているため開放感も申し分ない。さらに主寝室のある最上階は、吹抜けを利用したブリッジが架かり、その奥には約40畳ものルーフバルコニーが広がっている。
最後にユニットプランの間取りと専有面積を紹介すると、2LDK~3LDK+α・70.60?~116.98?となっている。ターゲットは夫婦ふたりのDINKS~子供のいるファミリーと多彩だが、年齢的には40代~50代の落ち着いた層も結構多いのではないだろうか。いずれにしても個性的で「こだわり」の強いことは確かと言える。
パンフレット資料を見ると、各階の住戸をつなぐ廊下のことを「ボードウォーク(boardwalk)」と呼んでいた。ルーバーをしつらえたファサード・デザインにより、あえて半分オープンエアになっているこの廊下は、橋渡しのように板張りになっていて人々を安らぐ我が家へ導く。
「ボードウォーク」とは海沿いに設けられる板張りの遊歩道のこと。ふとTHE DRIFTERSというヴォーカル・グループが唄っていたUNDER THE BOARDWALKという曲を想い出した。季節は夏、「誰にも見つからないこの場所で君と過ごしたい・・・」といった内容だと思うが、なんとなくロマンティックで落ち着く安息感があるこの住まいにふさわしい気がする。