サブプライムローンの影響と「完成在庫マンション」の思わぬ価値

2008年09月16日

米国ではサブプライムローンによる問題で住宅差し押さえ関連サイトが人気を呼んでいるらしい。普通であればなじみのない「差し押さえ」というワードによる検索が急増しているのだ。「お買い得物件」を探す人もいるが、「家を失わずに済む方法」を見つけようとする人もいる。実は後者が多いというから事態はかなり深刻なのだろう。

日本でもよく耳にするサブプライムローンだが、もとの意味はPRIME(優れた)よりSUB(下位)のローンということだ。これはプライムローンを組める人(社会的に十分な信用度のある人)ではなく、組めない人たちでも利用できるようにした、いわゆる低所得者層向けのローンである。つまり本来、住宅などを買える状況ではない人たちに、住宅を買わせてしまおうという仕組みである。


ざっくり言うとサブプライムローンでは、信用度の低い人たちが低金利で住宅を購入する。続いて物件価格の値上がりを前提として、彼らはさらに追加融資を受けてしまう。ところが物件価格は下落し、逆に金利は上昇する。そういった連鎖の中で結果的に破綻するケースが多い。これは日本のバブル崩壊を見ているようであり、どうしても誰かに「仕組まれた」雰囲気を感じてしまう。

そして米国で始まったサブプライムローン問題がいま世界に波及している。今月(2008年9月)に入って、米国政府はサブプライムローンの当事者である住宅公社2社を公的管理下に置く救済策を発表した。これは事実上の国有化で、これにより世界にばらまかれた同社の社債や証券は一定の「保証」を得ることになる(はずである)。根本的な解決のない中での「付け焼刃」的な対策かもしれないが、市場に与える安心効果は大きいと期待されている。


さて、日本はどうなのか。米国公社2社の債権総額が500兆円(日本のGDPに匹敵)、その内日本の金融機関が抱えているのが合計50兆円に達するというから、日本だけで10%も持っていることになる。また積極的に投資を行っていた外資系ファンドは経営が悪化し、撤退する。日本もかなり大きくサブプライムローンの影響を受け、深く関与していることになるのだろう。

アメリカの国債のように「安心」だと思って買ったサブプライムローンの債権が、実は大きなリスクを持っていたわけだから、当事者は破綻した結果の影響を受けるのは仕方がない。とは言え、日本のマンションデベロッパーの一部で起きているように、金融機関からの資金調達が困難になり倒産する悲劇は、結果的にサブプライム問題の「波及」に他ならず痛々しい。

最近のマンション市場については、、2008年首都圏マンション市場の上半期総括で、建築基準法改正やマンション価格の上昇により今年はいまのところマンション供給戸数が減っているという話があるので参照していただきたい。ここでもう1つ注目したいのは、今年になって残戸数が増えている点である。これは景気の悪化や価格の上昇で売れ行きが伸びないことが大きな原因と思われるが、やがて「売れない」=「完成済」につながり、「完成在庫」になっていく状況を示している。

ところで、マンションとは基本的にレディメイド(ready-made)な商品である。

既製の洋服ならば試着もできるが、原則「青田売り」のマンションはなかなかそうは行かない。見えない部分だってたくさんある。地盤に対してしっかりと建てられているのか、構造は耐震・耐火仕様になっているのか、また設計どおりにきちんと施工されているのか等々、不安は尽きない。

マンションをつくるには、市場に適した商品企画の立案や建築基準法に則した設計が必要であり、全体計画はおのずと決まってしまう。躯体内部の専有部についてはオーダーメイド感覚が活かせる場合もあるが、基本プランはほぼ決められている。つまり買い手にとってマンションの基本設計や性能、品質などは「用意されたもの」を買うか、買わないかという選択しかないということである。

完成在庫となった「即入居可」のマンションは、買い手にとって自分で実物を見てから買えるという点で「安心で合理的」なのではないだろうか。見えない部分については住宅性能表示制度による「設計性能評価」と建築後に検査される「建設性能評価」で確かめるという方法もある。


今年は全国的に完成在庫を数多く抱えながらマンションが販売されている。
ちまたでは耐震偽装や建築基準法改正の問題、そしてサブプライム問題が波及した相次ぐデベロッパー倒産の問題など、購入者にとって不安や心配の要素が増えてきている。マンションが売れない、さらにあらゆる原材料費が高騰を続けるなか、デベロッパーにとってはいかに基本性能や品質を維持して顧客に「安心」を与えられるかが課題だと思う。

これから数年後に供給されるマンションは果たして実質的に大丈夫なのか?こうして見ると今年、完成在庫のマンションは少なからず「買い」なのかもしれない。今年後半のマンション市場はどうなるのか?そしてその先は・・・

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