「名古屋マンハッタン化計画」が進行中?
今回は、名古屋のタワーマンションについてのお話です。
マンションに限らず、背の高い建物が増えて、「ああ、名古屋も都会になったなあ」なんて感じる今日この頃です。では、これっていつ頃からの出来事だろう?名古屋圏における「タワー化現象」について考えてみました。
■天気予報のときテレビに映るのは栄テレビ塔だったのに...
都心部でも高い建物があまり目立たなかった名古屋ですが、1999年に名駅隣接の「JRセントラルタワーズ」(オフィス棟51階/約245m・ホテル棟53階/約226m)が完成しました。地元に住む私たちも、新しいランドマークができて、ちょっと誇らしい気持ちになったものです。あまり語られないことですが、在名テレビ局の天気予報番組でバックに移る風景が、それまでは栄のテレビ塔が多かったのですが、そのときを境にタワーズを含む名古屋駅の風景に切り替わっていったのです。やはり、高い建物はその土地のシンボル、というものなのだ、と感じた出来事でした。
■本格的なタワーマンション市場ができるまでには時間が掛かる?
では、そのとき名古屋にタワーマンションはあったのでしょうか。
実は、それより3年前の1996年に「ザ・シーン城北」(45階/約160m)が完成しています。名古屋市内でも比較的郊外の住宅地に位置し、都心からは5km以上離れたバス便物件で、当時としても異色の存在でした。その後7年経過した2003年に「G.A.タワー」(24階/約70M)、翌2004年に「ライオンズタワー千種」(27階/約97m)が登場しますが、いずれも100m以下でした。しかし今年2008年3月の「Nagoya Center Tower」(29階/約103m)以降は、2009年3月完成予定「ザ・ライオンズ・ミッドキャピタルタワー」(47階/約161m)、同5月予定「ブリリアタワー名古屋グランスイート」(29階/約106m)、また2010年に完成する「グランスイート千種タワー」(30階/約101m)は今後発売予定、などなど、続々とタワーマンションが販売されています。今では一般的になった感もある分譲タワーですが、初登場から数えて、1年間に複数物件が登場するようになる2009年まで、約13年の歳月を要しています。堅実で知られる名古屋の人には、まばゆいばかりの眺望が我が物になる「分譲タワーマンション」が身近になるのに少し、時間が必要だったのかもしれません。
■ミッドランドスクエア登場が、タワーマンション市場をアシスト
市場を活性化したひとつの契機は、2006年9月完成のオフィスビル「ミッドランドスクエア」(47階/約247m)にあったと言えるでしょう。前述のJRタワーズを抜いて市内最高峰となったこのビルには、地元が誇る世界企業トヨタが入居、名古屋が元気だと注目を浴びた愛知万博開催の年でした。その後も名古屋駅前に高層ビルが続々登場したタイミングとときを同じくして、分譲タワーマンション市場も活況を帯びていくこととなります。
■いまや、郊外部にまで波及したタワーマンション市場
影響を受けたのは名古屋市内だけではありません。2007年10月には「岐阜シティタワー43」(43階/約163m)が人気を呼び、また愛知県三河地区にも今年「岡崎タワーレジデンス」(31階/約100m)が登場。同エリアでは、1棟構成のタワーとは異なりますが、安城市に2006年「ゼルクシティ安城」(25階)が登場するなど、郊外でも分譲マンションの高層化が進みました。市街化された名古屋に比べて、郊外部の高層マンションは、周りに視界をさえぎる建物が少ないということもアピールポイントだったようです。名古屋の都心を遠くに見下ろせる優越感もあったのかもしれません。
■いつの世も、人間は高層タワーにロマンを感じるもの?
実は、超高層マンション販売では、ひとつの神話があります。"販売時期における市場で「最高峰」と言える物件は成功する"伝説です。そのマンションを検討しているときに、または買った後にでも、知り合いに「あの一番高いタワーだよ」と、紹介できるステイタスが貴重なのだという、その説には「なるほど...」と私も納得してしまいます。ちなみに、「岐阜シティタワー」163mは「ザ・シーン城北」160mをわずか3m超えたことが当時の人気につながったと言えますし、「ザ・ライオンズ・ミッドキャピタルタワー」161mも、「名古屋最高層161m、47階建タワーマンション」というフレーズがキャッチコピーとして使われ、テレビCMでも流れました。このコラムを書いているときにちょうど流れたニュースでは、「中東のドバイで高さ約1kmのビルが建設予定」(!)などという情報が聞こえてきたのにも驚きました。日本のどの街でも、あるいは世界の都市でも「最高峰」というフレーズには、人はロマンと憧れを掻きたてられるのかもしれませんねぇ...。